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相変わらず東の運転は滑らかで、目的地までスムーズに到着した。
車内では、最初に一言交わしただけで誠吾と遥の間に会話はなかった。
「あらっ!黒川さんのところの人かしら?やだぁ!想像してたよりだいぶ可愛い!」
車から降りた遥は、突然可愛らしい感じの女性に声をかけられ戸惑ってしまった。
「姐さん……。お客人が驚いてますから…」
姐さん?
この人が藤代組の組長の奥さんなのだろうか?
ふわふわとした可愛い洋服を着て、少女のように無邪気に笑うこの人がヤクザの妻には見えないけれど……。
遥はそう思いながらも、姐さんと呼ばれた人物にぺこりと頭を下げた。
「本当に可愛い!夏樹ちゃんと同じくらい可愛いわ。ね、龍ちゃん!」
「お袋……。煩いからちょっと黙ってて」
金髪に染めたげた髪に、両耳にピアスを何個もつけた青年が遥達の前に現れた。
「藤代龍二です。ようこそお越しくださいました」
チャラチャラした見た目とは違って、青年は丁寧に挨拶をすると深く頭を下げた。
「黒川誠吾です。龍二さんには、お初にお目にかかりますね」
「何分まだ学生なもので、集まりには顔を出せず申し訳ありません」
どうぞ、と龍二に促されて、黒川の一同は家の中に招かれた。
「あ、尾崎さんは夏樹が待ってるんで別室で……」
「夏樹……さん、ですか?」
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