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龍二は頷くと、奥の突き当たりの部屋を指さした。
「あの部屋に夏樹が居ます。お出迎えに出たがってたんですが、今日はちょっと目眩がするらしくて…」
夏樹というのは誰なのだろう。
遥はよく分からないまま、曖昧に頷いた。
とにかく、夏樹という人が自分を待っているなら会ってみるしかない。
「では、お部屋にお邪魔して、みます」
「夏樹は貴方に会えるのを楽しみにしていたので……」
夏樹が誰なのか、どうしてここに呼ばれているのか、分からないことだらけだったが、遥は言われた通り廊下の突き当たりの部屋に向かった。
「あの……尾崎です」
襖の前で声をかけると、中から「どうぞお入り下さい」と声がする。
遥は言われるまま、襖を開けて室内に入った。
「君が尾崎君か。さ、どうぞこちらへ…」
部屋に置かれたソファに、遥とそれほど歳も変わらなそうな少年が座っていた。
綺麗に整った顔に、親しみを込めた笑顔を浮かべるこの人は誰だろう。
そう思いながら、遥は勧められたソファに自分も腰掛けた。
「今日は僕がお呼びしたのに、出迎えに出られなくてごめんなさい。朝から今日は目眩が少しして…。僕は緒川夏樹と言います」
「尾崎遥……です」
お呼びした……。
僕はこの夏樹と言う人に呼ばれたのか。
「龍二には会いましたよね?金髪のピアスジャラジャラつけた……」
「あ、はい。玄関のところで…」
「僕は龍二の恋人です。尾崎君と……立場は似たようなものかと思います」
にっこりと、夏樹は綺麗な笑顔で微笑んだ。
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