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「でも、他の人を、受け入れて……」
「体は犯されたかもしれないけど、心までは奪われてないでしょう?」
自分の意思ではなかったけれど、誠吾以外と体を繋げたことで罪悪感があった。
もう、愛してもらえない。きっと幻滅されたと思っていた。
でも……。
僕はまだ誠吾さんを愛している。
誠吾さん以上に愛せる人に、今後出会えるとは思えない。
「心はずっと、誠吾さんの、もの……です」
ぽろぽろと遥の目から涙が零れると、夏樹はうんうんと頷きながらティッシュで目元を拭ってくれた。
「彼とよく話してみて……。きっと大丈夫。君の帰る場所は彼のところでしょ?」
「はい……。あそこにまた、帰りたい、です」
素直な気持ちを口にすると、すごく気持ちが楽になった。
一緒にいたい。
愛してるって、伝えなきゃ。
レイプされたのは辛かったけど……そんなことで誠吾さんを失いたくない。
遥は夏樹の前で思い切り泣いて……。
泣いている間、夏樹は黙ってずっと手を握っていてくれた。
初めて会ったはずなのに、何も言わなくても夏樹には遥の気持ちが分かるようで、不思議と安心できた。
「すみません。みっともないとこ、見せてしまって……」
「ううん。落ち着いた?」
「はい」と、遥は恥ずかしそうに微笑んだ。
素直な表情に、夏樹の顔も緩む。
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