第11夜

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遥も夏樹と過ごす時間は楽しかった。 ここに今日来ていなければ、一人でまた悶々と考えて、よからぬ行動を起こしてしまうところだった。 「遥、絶対に死んだりしないでよね。僕、友達と遊びに行ったりする夢もあるんだから」 「死なないよ。大事な恋人と、友達が、居るんだから」 遥の返事に夏樹はにこっと笑った。 とても綺麗な笑顔に、遥の心が癒される。 二階堂悟は最低な人間だったけど……夏樹との縁を結んだのが悟なのだから、生きていると本当に何があるか分からない。 連絡先の交換もして、遥は夏樹の部屋を出た。 最初に通された客間に戻ると、山根と東と佐山が三人で話をしていた。 「尾崎君、話は終わりましたか?」 「はい。あの、誠吾さんは……?」 「こちらの若頭と庭にいます。そろそろボスに声を掛けて失礼しましょうか」 そう返事をしながら、山根は遥の表情が随分明るくなっていることに気付いた。 目が少し赤いので、泣いたのかもしれないが、思い詰めたような悲しい顔を今はしていない。 ああ、この訪問は間違いではなかった…。 山根は胸を撫で下ろす。 今日ここに来たのは一種の賭けだった。 会ったこともない人物に、果たして遥の心を救えるのか……。だが、何もしないよりはいい。 誠吾も山根も東も、そう思って今日ここにやって来たのだ。
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