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玄関から門に向かって歩いていると、誠吾が龍二と一緒に歩いて来た。
砕けた表情で話す誠吾も、ここに最初来た時よりも随分穏やかな顔をしていた。
誠吾は遥の姿を認めると、少し笑って手を挙げた。
自然な動作に、遥も小さく手を挙げて応える。
やっぱり……誠吾さんは格好良いや。
僕に……誠吾さんのことを諦めるのなんて無理だ。
遥は改めて誠吾への気持ちを確認する。
そして、誠吾も同じ気持ちならいいなと願うのだった。
「藤代の坊と、どんな話をされたのですか?」
「ああ……龍二か。アイツ、俺の方がかなり歳上なのに、遠慮なくずけずけと色々言ってやがったな」
はははと誠吾が楽しそうに笑った。
帰りの車内は、行きとは比べ物にならないほど穏やかな空気に満ちていた。
「尾崎君は、夏樹さんとはどうでしたか?」
「初めて会った、感じがしなかった、です。今度、遊びに行こうって、約束しました」
「遊びにですか……それはいいですね」
山根の言葉に遥は嬉しそうにこくりと頷いた。
「……行き先は黒川でよろしいですか?」
運転席から東が声を掛けてくる。
「東、俺と遥はちょっと話がしたいんでホテルで落としてもらえるか?遥、いいか?」
「はい。僕も、話したいです……」
かしこまりましたと、東はそのまま誠吾と遥が何度も利用したことのあるホテルの前に車を回した。
「お迎えの時は連絡ください」
「ああ。ありがとな」
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