第12夜

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第12夜

フロントでルームキーを受け取ると、誠吾と遥はエレベーターに乗り込み部屋に向かった。 途中で会話はなかったが、遥は早く誠吾と話したくて堪らなかった。 僕の気持ちを話して…誠吾さんが受け入れてくれたら……。 僕はもう絶対に誠吾さんの手を離さない。 「あ……この部屋は……」 「電話したらこの部屋を空けてくれてな。俺達はこの部屋から始まったもんな。ここで遥と話したいと思ってよ」 ソファに遥を座らせると、誠吾は部屋の備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに注いだ。 遥にグラスを渡すと、自分も遥の隣に腰を下ろす。 「遥………。悟のことも冴子のことも……本当に申し訳なかった」 「あれは、僕の不注意で…。危機意識、みたいなのが、足りなくて……自分で招いた、ことですから……」 誠吾さんは護衛をつけてくれたり、色々気を配ってくれていたのに。 僕が浅はかだったから起きてしまったことだ。 誠吾さんが気に病む必要は全くないのに…。 「僕こそ、ごめんなさい。勝手なことをして、迷惑かけて……」 「悟に……あんなことをされて、辛かったろう……。守ってやれなくてごめんな……」 「僕のこと、嫌いに、なりましたか?」 遥の言葉に誠吾は目を見開いた。 「何で俺が遥を嫌いになるんだ?」 「だって………他の人と、セックス、しました……」 遥はきゅっと唇を噛み締める。 幻滅したと言われたら…どうしよう。
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