第12夜

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「俺には遥しかいない。遥以外は要らないんだ……。愛してるよ、遥」 「誠吾さん……」 遥は誠吾の背中に手を回して、ぎゅっと抱きついた。 ほんの数日間離れていたたけなのに、誠吾の温もりを感じるのは久しぶりな気がする。 「冴子さんは、どうなりました?」 「ああ……冴子か。目が覚めたらすっかりしおらしくなってたが……。演技かもしれねぇからな。二度と顔を見せるなと、うちのシマから追い出した」 本当なら、もっときつい罰を与えたかったが………。 遥に酷いことをしたあんな女でも、きっと遥は罰を与えるのにいい顔をしないだろう。 「そう、ですか……。もう少し、心を開いて、もらいたかったです…」 「遥は利用されたんだぞ?そんな甘いことを言って……」 「でも、誠吾さんを、愛したのは、同じだから……。どうしても、憎いとは、思えません」 冴子も本気で誠吾を愛していたのだろう。 やり方を間違えてしまったが、誠吾の愛を手に入れる為に必死だったのだ。 いつか冴子が、誠吾以外に愛せる人をが見つけられるといいなと遥は思った。 「二階堂悟、は?」 「完全に籍を抜かれて、池田に姓が変わったな。仮釈放中に騒ぎを起こしたから刑務所に戻された。あとは薬の売買の件で新たな余罪が出てきて……暫く出てこれねぇよ」 そうか……。 もう、あの人に怯えなくてもいいんだな。
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