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第2夜
「それでは涼太さん、今日は病院に行ってから学校に直接行きますので後で教室で……」
「はい。姐さん、お気を付けて」
誠吾に付き添われて遥が病院に向かうと、青山は大きく息を吐いた。
元気なのに検診に行くのは面倒です、などと遥は笑っていたが体調は大丈夫なのだろうか。
遥は昨日、夜遅くまで授業を受けてから帰宅したのに、今朝は誰よりも早く起きて家事をこなしていた。
この生活が続いたら体調を崩すのではないかと心配だ。
「涼太、元気がないな。どうした?」
正蔵に声を掛けられて、青山は慌てて笑顔を作った。
「あ、いえ。姐さんが病院にお出かけになったので心配で……」
「ああ。遥の診察の日だったね。あの子はすぐ無理をするから確かに心配だ」
いつも笑顔の遥だが、時々疲れた顔をしている時がある。
そんな時でも目が合えば笑って『何か御用がありますか?』と聞いてくるのだ。
「姐さんには、ずっと元気で笑っていて欲しいです」
「そうだな。遥が来てからうちは随分明るくなったからな」
正蔵は、青山がずっと遥の傷を気にしているのを知っていた。遥本人は腎臓なんて一つあれば十分ですからと気にしていないが、青山
は遥が撃たれたあの日の光景が忘れられないでいた。
姐さんに何かあれば、次は絶対に俺が守る。
青山の決意は固かった。
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