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「はい。夏樹とは、話しやすいので」
「そうか。いい友達ができて良かったな」
夏樹なら遥と二人きりにしても安心だ。
お互いに境遇の似たところがあり、打ち解けやすいのだろう。
夏樹と話した後の遥は、楽しそうなので誠吾も嬉しかった。
「夏樹、僕のことを、可愛いって言うんです。夏樹の方が、可愛いし、綺麗なのに…」
「いや、遥の方が可愛いって俺は思うぞ」
「誠吾さん、だけです。僕を可愛いって、思うのなんて」
くすくす笑う遥は、本当に自分のことが可愛いとは理解していない様子だ。
そこもまた可愛いのだが……。
他の男の前でそんなに可愛く笑われたら、不安で堪らない。
「遥、頼むからもう少し気をつけてくれ…」
「それ、夏樹にも、言われました。他の男に、体とか、触らせるなって」
夏樹……可愛い顔してるが、遥よりだいぶしっかりしてるんだな。
遥は苦労して育った割に、素直で人を疑うことを知らないから本当に心配だ。
「お嬢の言う通りだぞ?俺以外に触らせるなよな。あと、可愛い顔で笑いかけるのも駄目だからな」
「はい。気をつけますね」
にこにこと返事をする顔が既に可愛すぎるのだが……本当に大丈夫だろうか。
黒川の中では俺のものだと分かっているので、誰も手を出さないかもしれないが…。
「学校では……変な奴いないか?」
「うーん……。あ、前に一度だけ、先輩に絡まれました」
「はぁ?!聞いてないぞそれ」
「山田さんが、助けてくれたので。特に何もなかったから、忘れてました」
すみませんと謝る遥を見て、誠吾は頭を抱えてしまった。
臨時講師を辞めた今、もう自分が学校に行くことはできない。青山と山田がついているとしても心配は尽きなかった。
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