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「遥?どうかしたか?やっぱり調子が悪いのか?」
元気のなくなった遥を心配して誠吾が声を掛ける。
今日の検査結果で腎臓の数値が悪いというのが心配だった。学校も今日は休ませた方がいいのではないだろうか…。
「あ、いえ。元気ですよ。ぼんやりしてすみませんでした」
つまらないヤキモチで誠吾に心配をかけてしまったと、遥は慌てて笑顔を作った。
しかしそれはぎこちなく、誠吾が余計に心配するものだった。
「なあ……。本当に大丈夫なのか?」
「本当に大丈夫ですから。誠吾さん、何飲みますか?僕は紅茶にしようかな…」
誠吾が手を挙げて冴子を呼ぶと、冴子はにこやかに注文を取りに来た。
「お決まりですか?」
「コーヒーと紅茶で」
かしこまりましたと冴子は奥に下がって行った。
優雅な身のこなしに落ち着いた声は、大人のいい女そのものだ。
自分のような子供っぽい男よりも、あんな大人の女の人の方が誠吾さんには似合っているな……。
などと考えると遥の胸がぎゅっと締め付けられた。
「やっぱり顔色が良くないな。無理しないで今日は学校休んだらどうだ?」
「本当に元気ですから。体育はちゃんとお休みしますし……」
学校は休みたくなかった。
せっかく勉強できる環境にあるのだから、たくさん勉強して知らなかったことをもっと沢山知りたい。
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