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これ以上暗い顔をしていては誠吾に心配をかけるばかりだ。
遥はテーブルの上に置かれた誠吾の大きな手に自分の手を重ねた。
「心配おかけしてすみません。本当に大丈夫なので……学校には行きますね」
「分かった。でも、無理だけはするなよ?」
「はい。分かりました」
遥がにっこり笑うと誠吾は重ねられた遥の手に指を絡めた。
「今度遥に何かあったら、俺は生きていけないんだからな」
「誠吾さん……………」
誠吾の温かな手の温もりに、ざわついていた遥の心が落ち着いていく。
自分はこんなに愛されているじゃないか。
勝手に妄想して変なヤキモチを焼くなど馬鹿だな………。
「あら、本当にお二人は仲がよろしいのね」
コーヒーと紅茶を載せたお盆を持って冴子がにこやかに席にやって来た。
遥は慌てて手を離そうとしたが、誠吾は絡めた指に力を入れて遥の手を離さない。
「ああ。俺は遥のことが大好きだからな」
「誠吾さん………」
「あらあら。妬けちゃうわ」
冴子は笑いながらテーブルに飲み物を置くと「ごゆっくりね」と、伝票を置いて再び奥に下がって行った。
「誠吾さん、恥ずかしいです……」
「何故だ?だって俺達は愛し合ってるんだから手を繋ぐくらいはいいだろ?」
指を絡めたまま、誠吾は遥の手の甲に口付けた。ちゅっと音を立てて唇が触れると、遥はビクッと体を震わせる。
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