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「誠吾さん!」
顔を真っ赤にして誠吾を見上げると、誠吾は笑いながら遥の手を離してくれた。
余裕のある微笑みに、また誠吾さんに翻弄されてしまったなと遥は苦笑した。
この大人で格好良い恋人に自分が敵う訳はないのだ。
お茶を飲んでカフェを出た時には、そろそろ遥の登校時間になっていた。
「高校まで送って行くよ」
「ありがとうございます」
遥は誠吾と並んで歩けるのが本当に嬉しかった。普段は車で移動することが多く、一緒に歩けて本当に幸せだ。
「今日は何の授業があるんだ?」
「英語と古文と体育です。人数が少なくて男女混合だと体育はどうやってやるんでしょうね?」
先程の暗い表情が嘘のように遥は楽しそうに話している。
具合が悪そうな感じはなく、さっきはどうしたんだろう?と、誠吾は不思議だった。
「あ!遥さん!……と、若……」
校門のところで遥はを待っていた青山は、誠吾のことを若頭と言いかけて慌てて口を押さえた。
「青山さん、待っていてくださったのですか?ありがとうございます」
「病院の方はいかがでしたか?」
「問題ありませんでしたよ」
遥がにこにこしながらそう言ったが、青山はチラッと隣に立つ誠吾の顔を見た。
誠吾は難しい顔をしているので、本当は何かあったのではないかと思われる。
「何も無いことねえだろうが」
「でも……たいしたことないですし」
「遥さんの検査結果が悪かったんですか?」
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