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「お!遥ちゃん、こんばんは~」
ヒカルが後ろからぎゅっと遥に抱きつくと、青山は無言でヒカルを引き剥がした。
「青山くん……こんばんは~」
「遥に気安く触るな」
ギロっと青山が睨むとヒカルは肩を竦めて笑った。青山が極道で、しかもその世界では狂犬と呼ばれるほど有名だとは知らないのだ。
知っていたら笑ってなどいられないだろう。
「あれっ。遥ちゃん、首のとこキスマークついてる!」
真凜が遥の首筋に付けられた痣に気付いて指さすと、遥は慌てて首を押さえて跡を隠そうとした。
「あら。遥ちゃん、女の子みたいに可愛い顔してるのに彼女がいるの?」
「柴田さん……こんばんは。えっと、その、恋人は……います」
遥が真っ赤になって俯くと、真凜と柴田が相手はどんな女なのか質問攻めにし始めた。
だから見えるところに付けないでってお願いしたのに………。
「そんな、見えるとこにキスマーク付けるなんて余程独占欲の強い女の子なのねぇ」
「なんか、遥ちゃんが女の子抱いてるとか想像できないんだけど……」
遥は居た堪れなくて逃げるように席に着いた。女性二人はまだ遥の相手を想像して盛り上がっている。
自分の恋人が女ではなく男だなんて……抱く側ではなく抱かれる側だなんて……言えば更に盛り上がるだろう。
絶対に言えないや。
遥がそう心に決めた時、タイミングよく池田先生が教室に入って来た。
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