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「ホームルーム始めるぞー。席に着けー」
今日も全員揃っていた。
先程の恋人の話を皆に聞かれていたのではないかと思うと、顔を上げるのが恥ずかしかった。
「じゃあ、給食食べたら地学の授業から始めるからな~」
池田先生には聞かれてなかったのかな。
先生は今日も眠そうにのんびりした調子で話すと教室から出て行った。
そういえば、体育は暫く見学させてほしいと先生に言っておかないといけない。
遥は席から立ち上がって池田の後を追った。
「池田先生!」
「ん?尾崎、どうかしたか?」
「あの、体育は暫く見学でもいいですか?」
見学だと単位が貰えないのだろうか。
そう心配して自分を見上げる遥の頭を、池田はぽんぽんと撫でた。
「尾崎はどこか具合が悪いのか?」
「僕……怪我で腎臓が片方しかなくて、ちょっと今数値が良くないので運動禁止されてるんです」
遥はいつもにこにこしていて元気そうだったので、そんな状態だと池田も思ってはいなかった。
「うちの体育なんて、体育館に移動しただけで単位貰えるから安心しろ。それより、あんまり無理すんなよ」
「はい。ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて教室に戻る遥の後ろ姿を見送って、池田はガシガシと自分の頭を搔いた。
「何だあのキスマークは……」
遥の首筋に見えたキスマークが目に焼き付いてしまって、ドキドキと自分の心臓が煩い。
生徒にドキドキするだなんて初めての経験に、池田は戸惑っていた。
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