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遥は目で青山を探したが、青山は丁度遥に背を向けて卓球をしているところだった。
「ねえ、今日学校終わったらデートしない?」
「しません。手を離して……」
ニヤニヤしながら強引に遥の肌を触る齋藤のことが遥は怖くて堪らなかった。
この感じは以前二階堂悟に触られた時に似ている……。
嫌だ…………。
遥が何とかして齋藤から逃れようともがいていると、突然卓球のボールが齋藤の額に命中した。
「痛っ。何だよ!」
「おい、てめえ…。嫌がってんだろ。そいつから離れろ」
山田が大股で近付いてくると、齋藤の手を掴んで遥から引き剥がしてくれた。
「何すんだよ……」
「あん?何か文句あんのか?」
山田が凄むと、齋藤は「覚えてろよ」と悔しそうに捨て台詞を吐いて遥から離れて行った。
ホッとした遥は、大きく息を吐いてから立ち上がって山田にぺこりと頭を下げた。
「山田さん、ありがとうございました」
「なんか、されてねえか?」
不機嫌な顔のまま、だが山田は明らかに遥のことを心配している。
やっぱり山田さんは優しい人だと遥は思った。
「大丈夫です。少し、触られただけです…」
「そうか。お前、綺麗な顔してるんだから気をつけろよ」
「綺麗……?普通だと思いますけど…」
ぽかんとする遥を見て、山田は大きな溜め息をついた。「無自覚かよ……」山田の小さな呟きは遥の耳には届かない。
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