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拳を握りしめて怒りを露わにする青山を、遥は慌てて制止した。揉め事を起こしては学校に居られなくなるかもしれない。
「涼太さん、本当に何ともなかったので。山田さんがちゃんと注意してくれましたし」
「山田……意外といい奴っすね」
「本当ですね」
にこにこと遥が答えるのを見て、青山はひとまず怒りを抑えることにした。
これからはもっと注意して姐さんのことを見ていないと………。
「誠吾さんには、絡まれたことは言わないでもらえますか?」
「いや、全部報告するよう言われてます」
「お願いします。誠吾さん、きっと凄く心配すると思うので……」
遥は青山に深々と頭を下げた。
誠吾に言うと、きっと心配して学校を辞めたらどうだなどと言いかねない。
「本当にたいしたことなかったんですか?」
「指でちょっと触られただけです。すぐ山田さんが止めてくれましたから」
「…………分かりました。遥さんをお守りできず本当に申し訳ありませんでした」
青山も遥に向かって頭を下げたため、二人で向かい合ってお辞儀をする形になってしまった。
「そこ、二人とも何やってんだ?青山、次お前の番だから早く戻って来い」
担任に呼ばれて青山は卓球台の方に戻って行った。今度は遥の姿が見えるよう、立ち位置をきちんと考える。
壁際にちょこんと座る遥は、大事にならなくて良かったと安心していた。
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