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第3夜
結局遥は案の定お腹を壊してしまい、その日はトイレと部屋の往復をすることになってしまった。
「本当に済まない。途中から歯止めが効かなくなって……。俺がゴム着けるのを忘れたばかりに……」
「大丈夫です。僕も、ゴムのことなんて思いつきもしなかったので」
遥は弱々しい笑みを浮かべた。
以前中に出されてお腹を壊してから、遥も誠吾も気を付けていたのに、昨夜は盛り上がってお互いにすっかり忘れていたのだ。
「だいぶ治まってきましたから。誠吾さんは悪くないです」
遥にだけ辛い思いをさせることになって申し訳ないと、誠吾は何度も謝った。
大きな体を小さくして謝る様は、なんだか可愛らしく見えて遥は誠吾の頭をそっと撫でた。
「昨日は凄く気持ちよかったです。ちょっとお腹は痛いですけど、後悔はありません」
「遥…………」
コンコンコン。
控えめなノックの音がした。
「誰だ」
「青山です。マツさんから姐さんにお粥を持っていくよう頼まれました」
誠吾がドアを開けると、お盆に土鍋を載せた青山が心配そうな顔で立っていた。
「すまねぇな」
「姐さんの具合は如何ですか?」
「今は横になってるが、だいぶ良くなってきたみたいだ」
「良かった…」青山はホッとした表情で、誠吾にお盆を渡した。
遥が寝込んだことで家の中は火が消えたように静かで、皆が遥のことを心配している。
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