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眠ってしまった遥を部屋に残して誠吾は広間に移動した。
昨日休んだ分の仕事を少しでも良く進めておかないと、また山根に叱られてしまう。
間の悪いことに、広間では山根が東とお茶を飲んでいるところだった。
パソコンを抱えた誠吾を見て「やっと働く気になりましたか?」と、山根が声を掛けてきた。
「うるさいな。今からバリバリ片付けるから黙ってろ」
「尾崎君はどうしましたか?」
「今寝たから、寝てる間にやっちまおうと思ってな」
パソコンを立ち上げて、シノギ先からのみかじめ料のチェックやメール等を確認していると山根が横からパソコンを覗き込んできた。
「東の幸町の辺りなんですけど、売り上げが落ちてきてるんですよ」
「あそこは山崎に任せてたよな。何か言ってたか?」
幸町は小さいが繁華街があるので、黒川にとっては貴重な収入源だ。そこの売り上げが落ちているとは由々しき事態である。
確かにグラフで確認すると、緩やかに売り上げが落ちてきていた。
「小さなトラブルがあちこちで起こっているらしくて、山崎が調査中とのことです。もしかしたら他所からちょっかい出されてるのかもしれませんね」
誠吾は腕を組んで低く唸った。
ここ最近は何事も無かったが、この世界は食うか食われるかだ。
少しでも気を抜くと一気に食い殺されてしまうかもしれない。
「何か分かったらすぐに知らせろ」
「かしこまりました」
うちに手を出そうなんざどんな間抜けだ。
見つけたら叩き潰してやると、誠吾は静かに笑った。
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