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誠吾が静かな怒りを露わにするのを見て、山根はぞくりと背筋が震えた。
普段『遥、遥』と恋人にデレデレしてばかりの誠吾だが、本来の姿はこの獰猛な獣のような姿なのだと思い出す。
ギャップが激しすぎでしょう……。
再びパソコンに向かう誠吾を見て、山根はそっと溜め息をついた。
仕事を一段落させて誠吾が部屋に戻ると、遥は起きてお粥を食べていた。
「冷めてるだろ?あっためてくるぞ」
「冷めてても美味しいですから大丈夫ですよ」
少し寝たら体調はだいぶ良くなっていたしお腹ももう痛くない。
「これ食べたら夕飯の支度をしますね」
「今日は大丈夫だぞ。マツが鍋にするって言って、田中達ともう準備してたから」
遥が具合が悪くなったと聞いたマツが張り切って家の中を仕切っている。
組員たちも遥をゆっくり休ませようと協力していた。
「皆さんにご迷惑おかけしちゃいました」
「普段働きすぎなんだ。たまにはゆっくり休んだ方がいい」
誠吾が遥の頭を撫でると、遥は気持ちよさそうに目を閉じた。
「学校に通わせてもらって、ただでさえ夕飯の片付けとか出来ていないのに…申し訳ないです」
「遠慮すんなよ。遥は俺の嫁さんみたいなものなんだから堂々としてろ」
誠吾の言葉に、遥は閉じていた目を大きく見開いた。
「嫁さん………ですか」
「そうだろ?周りもそう思ってると思うぞ」
遥は頬を赤く染めて誠吾から視線を逸らした。恋人同士であるという自覚はあったが、嫁という言葉はくすぐったくて……とても嬉しく思う。
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