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誠吾は自室に戻る前に、正蔵の部屋を訪れた。ノックをしてから名乗ると、すぐに青山が顔を出す。
「若頭、どうしましたか?」
「ちょっとお前に話があってな」
悟がもうすぐ出所することと、それを踏まえて羽鳥組に移った悟派の奴らが黒川のシマを荒らし始めた件を伝えると、青山の表情はどんどん険しいものになっていった。
「あのクソ野郎、出てくるのが早過ぎないすか?姐さんにあんな酷い怪我を負わせたくせに………」
「アイツには遥が何度も狙われてるからな。お前も用心してもらえるか?」
「気を付けます。ただ、学校ってのはちょっと護り辛いですね……」
カタギの一般人が同じ教室に居るのだ。
悟が学校に乗り込んできたりしたら、巻き込んでしまうかもしれない。
「二階堂の親父が血眼になって探すと思うんで、悟本人がうちのシマには入ってこねえとは思うんだが……。アイツ、イカれてるからな」
悟の、あの軽薄な笑みを思い出すと胸糞が悪くなる。
誠吾も青山も、二度とあの面は見たくなかった。
青山と話した後に誠吾が部屋に戻ると、遥は先に部屋に戻っておりテーブルの上にノートを広げて勉強していた。
「お、偉いな。宿題か?」
「はい。宿題出てたの忘れてました」
恥ずかしそうに笑うと、遥は再びノートに向き合って宿題を進めていく。
楽しそうに問題を解く様子に、悟のことは言えそうになかった。
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