第3夜

9/18

2797人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
「なあ遥、明日から行き帰りは車で誰かに送迎させるからな」 「え……?近いから歩いていけますよ?」 遥は不思議そうな顔をして誠吾を見上げると小首を傾げた。 「ちょっと組の方でトラブルがあってな、遥が巻き込まれたら困るから……頼む」 「……分かりました。お手数おかけしますけど……よろしくお願いします」 誠吾がそう言うなら、きっとそうした方が良いのだろう。誠吾はいつだって自分のことを一番に考えてくれているのだ。 学校に通わせて貰えるだけで有難いのだから、文句を言えるはずもない。 遥があっさりと送迎を受け入れてくれて誠吾はホッとしていた。 刑務所に入っている間に、悟も自分や黒川組への興味を失っているかもしれない。 だが、用心するに越したことはなかった。 遥も組も、悟の好きにはさせない。 勉強する遥を見守りながら、誠吾は静かに心に誓うのだった。 それから、暫くは何事もなく過ぎていった。 車での送迎も、目立たぬよう国産の大衆車で行ったため、学校で誰かに何かを言われることもなかった。 ただ、悟を警戒する青山が以前よりも遥にピッタリくっついているため、クラスでは過保護だと話題になっていた。 「青山君て、遥ちゃんのこと好きすぎだよね」 休み時間にトイレに行く遥に付き添う青山に、ヒカルが呆れたように声を掛けた。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2797人が本棚に入れています
本棚に追加