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誠吾と正蔵から、最近の不穏な動きを聞いていた青山はトラブルがあったのだと察したが遥は気付いていないようだ。
「さ、姐さん乗ってください」
「はい。ありがとうございます」
荒井にドアを開けてもらって車に乗り込む遥の姿を、昇降口のところから山田が見ていた。
いかにも極道といった風貌の荒井が運転する高級車を見送って、山田は呆気に取られてしまった。
青山が極道なのではないかという予感はあった。だが、ヤクザが遥に頭を下げて護るように車に乗り込む様子を見て、遥がどこかの組では重要な人物ではないかと気付いてしまったのだ。
どこかの組の息子か何かか?
青山と従兄弟というのも嘘だろう。きっと尾崎の護衛だ………。
山田は自分の携帯を取り出して、どこかに電話をかけ始めた。
青山と遥が帰宅すると、黒川邸は普段よりも人が多くバタバタと落ち着かない様子だった。
「何かあったのでしょうか?」
さすがに遥にも家の様子がおかしいことに気が付く。いつもはにこやかに出迎えてくれる組員達が険しい顔をして走り回っているからだ。
「ああ。遥おかえり」
「誠吾さん、何かあったのですか?」
「あー……、たいしたことじゃないよ。心配すんな」
誠吾は笑いながら遥の頭を撫でると、風呂に入っておいでと促した。
「二階堂悟ですか?」
遥が風呂に向かうのを確認して、青山は誠吾に尋ねる。
誠吾は遥に見せた笑顔とは全く異なる厳しい表情を浮かべていた。
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