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「悟が出所したんだ。羽鳥は公には受け入れていないが、羽鳥のシマに落ち着いたらしい」
「うちの……隣ですね」
「親父が今、二階堂と話に行ってる。早速悟の手下がうちのシマを荒らしててな…」
山根と東が組員達を引き連れて幸町のトラブル解決に赴いているが、悟のことだ。本家にも何かしてくるかもしれない。
黒川邸に人数を集めているのはそういう理由だった。
「奴は仮釈放の身ですよね。直接何かしますかね……」
「だから、アイツはいかれてるんだ。うちの本拠地にタマ撃ち込んでくるような奴だぞ」
最大限に警戒した方がいい。
「誠吾さん、お風呂いただきました」
「ああ……。温まってきたか?」
「はい。気持ちよかったです」
今日は珍しく遥はきちんと髪を乾かしてから風呂から上がってきた。
「珍しいな……。ちゃんと髪を乾かしてきたのか」
「誠吾さん、お忙しいんでしょう?僕は大丈夫ですからお仕事に戻ってください」
家の空気を察して遥なりに気を使ったのだ。
何があったのかは教えて貰えないが、きっと何か大変なことが起こっているのだろう。
「心配かけてすまねぇな……」
「僕に出来ることがあれば言ってくださいね。とりあえず……部屋で大人しくしていますから」
闘う事も出来ない自分が足手まといになるのは十分承知している。皆に迷惑をかけないためには、自分は大人しくしていたほうがいい。
誠吾と付き合ううちに、遥は自然にそう思うようになっていた。
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