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誠吾に受験しろと言われて、青山も一度は断ったのだ。
勉強など嫌いだし、このまま正蔵の傍で働けたらそれでいいと思っていた。
それなのに……。
誠吾から受験の話を聞いた正蔵が、嬉しそうに言ったのだ。
『涼太にも学歴をつけてやりたいって思っていたから丁度いい機会だ。遥と一緒に高校に行けばいい』
愛する正蔵にそう言われてはもう断れなかった。腹を括って受験勉強に取り掛かったはいいが………難しすぎる。
中学を卒業して10年……その中学もまともに通っていなかった自分が、まさかこの年で高校に行けるのだろうか……。
「はい、時間です。解けましたか?」
山根は遥と青山のノートを覗き込んだ。
遥のノートには綺麗な字で正解が書かれているが、青山の方はほぼ白紙に近い状態だ。
「青山………真面目にやってください」
山根が手に持った鞭をトントンと鳴らす。
実際にあの鞭でぶたれたことはないが、いつかぶたれるのではないかと青山はヒヤヒヤしていた。
「いや、俺は真面目にやってます!姐さんの頭が良すぎるんです!」
「青山………これは中二の問題ですよ。いくら定時制とはいえ高校に行くつもりなら義務教育レベルの勉強はできていないと…」
勉強なんてできなくていいと思っていたが、自分が馬鹿であることが露呈してこんなに恥ずかしいと思ったことは無い。
『春から涼太も高校生だな』
嬉しそうに言った正蔵の期待を裏切りたくはなかった。
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