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第5夜
「遥ちゃん、こんばんは」
「柴田さん、こんばんは」
「遥ちゃーん、こんばんはー」
「真凜さん、こんばんは」
同級生達ににこやかに挨拶をする遥はいつも通りに見えるが、青山にはやはり元気がないように思えた。
具合が悪いのならば無理をさせないようにしないと……そう思いながら、遥から目を離さないようにする。
「遥ちゃん!こんばんはー」
「ヒカルさん、こんばんは。今日は正装なんですね」
「今日はお金持ちのマダムと同伴なんだよね~」
同級生と他愛のない話をするのも今日が最後だと思うと、遥は寂しかった。
でも、最後だからこそ笑って過ごしたいと思う。
「瞳さんと山田さん、珍しく遅いですね…」
島村と山田はいつも早めに登校しているのに。珍しいなと思いながら遥が席に着くと、自分の携帯が震えているのに気が付いた。
誠吾さんかな……。
何かあったのだろうかと、慌ててディスプレイを確認すると発信者は『島村瞳』と表示されている。
島村が電話してくるなど、急用かもしれない。
遥は携帯を持って廊下に出た。
教室の入口のところで青山は遥が電話を受けるのを見守る。
遥の携帯には四人しか登録していないと聞いているので、電話を掛けてくるのは知り合いからだろう。
「もしもし。島村さん?どうしましたか?」
『……………』
「島村さん?」
電話の向こうではガサガサという音と誰かの息遣いがする。瞳が間違って通話ボタンを押してしまったのだろうか。
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