第5夜

2/18
前へ
/232ページ
次へ
「島村さん?」 『お嬢ちゃん、久しぶりだなぁ』 電話から聞こえてきた声に、遥は驚いて電話を落としそうになった。 何故瞳の電話からこの声がするのだろう。 電話の声の主は楽しそうに話し始めた。 『青山君が近くにいるんでしょ?気付かれないように普通に話してよね』 「どうして貴方が……」 二階堂悟。 忘れたくても忘れられないこの声の主は、刑務所に居るのではなかったのか。 『初犯だったし、いい子にしてたから出られたんだよね~』 「どうして貴方が島村さんの携帯から電話を掛けてくるのですか?島村さんはどうしたんですか?」 青山に不審に思われないよう、遥はなるべく静かな声で話すよう努力した。 本当は叫び出したいくらい恐ろしい。 だが、島村の身がどうなっているのか、それだけが心配だった。 『ああ。この地味な姉ちゃんなら俺の傍に居るぜ。お嬢ちゃんが一人で俺のとこに来てくれたら解放する』 「島村さんは無事ですか?」 『ギャーギャー騒いでたから、今は眠らせてるわ』 心臓が痛いくらいに早鐘を打つ。 瞳が乱暴なことをされたのではないのか。 すぐにでも助けに行かなければいけないが、それは即ち自分が悟の手に堕ちるということだ。 もし僕があの人のところで捕まったら……誠吾さんは何としてでも僕を取り返しに来るだろう。 どんな危ない目に遭っても……。 よく考えなきゃ。 どうしたらいいんだ……。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2796人が本棚に入れています
本棚に追加