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「島村さん?」
『お嬢ちゃん、久しぶりだなぁ』
電話から聞こえてきた声に、遥は驚いて電話を落としそうになった。
何故瞳の電話からこの声がするのだろう。
電話の声の主は楽しそうに話し始めた。
『青山君が近くにいるんでしょ?気付かれないように普通に話してよね』
「どうして貴方が……」
二階堂悟。
忘れたくても忘れられないこの声の主は、刑務所に居るのではなかったのか。
『初犯だったし、いい子にしてたから出られたんだよね~』
「どうして貴方が島村さんの携帯から電話を掛けてくるのですか?島村さんはどうしたんですか?」
青山に不審に思われないよう、遥はなるべく静かな声で話すよう努力した。
本当は叫び出したいくらい恐ろしい。
だが、島村の身がどうなっているのか、それだけが心配だった。
『ああ。この地味な姉ちゃんなら俺の傍に居るぜ。お嬢ちゃんが一人で俺のとこに来てくれたら解放する』
「島村さんは無事ですか?」
『ギャーギャー騒いでたから、今は眠らせてるわ』
心臓が痛いくらいに早鐘を打つ。
瞳が乱暴なことをされたのではないのか。
すぐにでも助けに行かなければいけないが、それは即ち自分が悟の手に堕ちるということだ。
もし僕があの人のところで捕まったら……誠吾さんは何としてでも僕を取り返しに来るだろう。
どんな危ない目に遭っても……。
よく考えなきゃ。
どうしたらいいんだ……。
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