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トイレの入口で遥は自分を見守る青山にぺこりと頭を下げた。
青山さん、ごめんなさい。
嘘ついて……。
遥はトイレに入ると、奥の窓を開けて音を立てないように外に出た。
そのまま校舎に沿って裏に向かう。
辺りはだいぶ暗くなってきていた。
よく知ってる人に案内させるって、誰のことだろう。
とにかく急がなければ……。
校舎裏に辿り着くと、そこには一人の男性が立って待っていた。
予想もしていなかった人物に遥は驚いて目を丸くする。
「さ、行こうか」
「は………い」
遥は手を引かれて駐車場に向かった。
遥がトイレに入ってから5分程経ったところで、青山は出てくるのが遅すぎるのではと心配になってきた。
もしかしたらトイレで貧血でも起こして倒れているのかもしれない。顔色だって真っ青だったではないか。
「ねぇ、青山君。先生も遥ちゃんも遅くない?」
「そうだな…。ちょっと俺、遥の様子を見てくる」
恥ずかしいから来るなと言われたが、遅いとやはり心配だ。
「遥さん?大丈夫ですか?」
トイレの前から声をかけても返事がない。
嫌な予感がしていた。
こんなことは以前にもあったではないか。
あの時も遥がトイレに行って……。
「遥さん!!」
予感は確信に変わる。
奥にある窓が開け放たれており、トイレ内に遥の姿はなかった。
「クソっ!」
青山はトイレの窓から外を見たが、見える範囲に遥の姿はない。
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