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「まだ着かねぇのか…」
「この辺りで信号が消えてますね……。あ、車が停まってますからあそこでしょう」
誠吾が遥のGPSを追って廃工場に辿り着いた時には、東率いる組員達や二階堂組からの応援でかなりの人数になっていた。
「親父から連絡があった。羽鳥とは話をつけて、羽鳥組と悟は無関係だから好きにしてくれて構わないってことだ……」
「尾崎君が無事で居てくれるといいのですが………」
山根が車を停めると、誠吾は車から飛び出して走り出した。
早く……早く遥を助けないと。
頭の中はそのことでいっぱいだ。
途中で悟の手下が何人か見張りをしていたが、誠吾はあっという間に見張りを倒していく。
無駄のないしなやかな動きで敵を倒す様は、獣のようだ。
誠吾の後ろには沢山の味方が居るというのに、殆ど誠吾一人で倒す様に山根は驚いていた。
誠吾が愛する人を得て平和ボケしたかと思っていたが、誠吾の中の獣は全く衰えてはいない。
「やはり、ボスはこうでないと……」
頼もしいボスの背中を見ながら、山根も誠吾の後に付いて廃工場を奥へと走って行く。
後方から、足の早い青山が追い付いてきていた。
廃工場の一番奥の部屋に明かりが灯っている。あそこに遥が居るのだろうか。
「尾崎…………っ!尾崎っ!」
悲鳴に近い叫び声が奥の部屋から聞こえてきた。誰の声かは分からないが、遥の名前を呼んだのに間違いない。
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