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入口に立つ見張りを吹っ飛ばして、誠吾は部屋に駆け込んだ。
「……………!遥ッ!」
これはどういう状況なのか、誠吾には理解ができなかった。
鎖を付けられて椅子に括りくけられた男が、泣きながら狂ったように遥の名前を叫んでいる。
床には手足を縛られて意識を失っている女。
そして遥は…。
全裸で床に横たわる遥の上に大きな男が乗って口にタオルを突っ込んでいる。
それを悟が困った顔で見ていた。
遥の意識があるのか分からない。
ただ、口に詰められたタオルは血に染っていた。
「あ、誠吾、早かったね。ちょっとトラブルがあってさぁ……。お前のお姫様、意外に根性あるね。自分の舌を噛み切って自殺しようとしたよ」
「遥…………!おい、遥……」
遥はピクリとも動かず、誠吾は駆け寄って上に乗っていた男を突き飛ばした。
遥の頬に手を触れるとちゃんとまだ温かい。タオルを外して傷を見ようとしたら、口内の血がごぼりと溢れてきた。
「ボス、タオルを外しちゃダメです!ぎゅっと傷を押さえて!血を飲み込んで窒息しないように顔を横に向けて!」
山根が誠吾の突き飛ばした大男の相手をしながら指示を飛ばす。
何かの格闘技でもやっていたのか、体が大きいくせにやけに動きのいい男の相手は山根には辛そうだ。
「山根のアニキ!俺と代わって下さい!」
部屋に駆け込んできた青山が叫ぶと、大男……池田はニヤリと笑った。
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