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「青山~。なんだよ、先生に刃向かうのか?」
「てめえ……姐さんに何てことをしやがった」
青山はチラリと遥の様子を見たが、ただ事ではないのはすぐに分かった。
クソっ……。
これじゃ、以前と同じじゃないか…。
姐さんが死んでしまったら………。
「俺は尾崎のことが好きだったぞ。今日だって生かして貰って帰るつもりだったし…」
「教師の風上にも置けねぇ…。お前のことは絶対に許さない」
池田のことはどこか得体が知れないとは思って警戒していたが、こんなにヤバい男だとは思っていなかった。
自分の甘さがただ悔やまれる。
青山は池田に向き合って拳を構えた。
池田と青山の戦いは互角といったことろで、黒川でも腕っぷしの強い青山に負けないのだから池田もなかなかの猛者だ。
拳で打ち合う池田と青山の傍で、誠吾は遥の止血を必死で行っていた。
舌の傷口を押さえるタオルがじわじわと濡れていく感覚が、遥から命が流れていっているようで恐ろしかった。
「ボス、救急車呼んでますから…。そのまま止血していてください」
「遥…可哀想に…。自殺しなきゃならねえほど追い詰められたなんて…」
鎖で繋がれた山田の拘束を山根が手早く解いていく。
「尾崎……は、無事ですか……」
薬で朦朧としながらも、山田は遥の無事を山根に尋ねた。
「生きています。きっと…大丈夫です。あの子に死なれたら…うちのボスはお終いです」
「俺……、アイツを助けたかった。のに…助けられなかった……」
後悔でぱたぱたと涙を零す山田の肩を叩いて、山根はふと周りを見回した。
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