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いつの間にか悟の姿が消えていた。
「ボス!悟が居ません!」
「クソっ……それどころじゃねえよ」
悟をまた野放しにすると何をするか分からない。直ぐに悟を捕まえた方がいいことは分かっている。
だが、まだ意識もなく出血が止まらない遥を置いていくわけにはいかない。
「とにかく私はこの付近を探してみます。拓馬!こっちに来てください!」
山根は外で建物を警戒していた東を呼んだ。
自分が追うと言う山根を押しとどめて、悟を追うために東は直ぐに部屋を飛び出していった。
東の方が追っ手としては優秀な筈だ。追跡は東に任せて、山根は床に転がされた瞳の拘束を解いた。
瞳はずっと眠ったままで、ここで何が起こったかも分かっていないだろう。
青山と池田の勝負も決着がついたようだ。
池田の上に馬乗りになった青山が、池田の腕を後ろで縛り上げている。
「姐さんは……ご無事ですか?」
額から血を流しながら青山が尋ねてきても誠吾は返事ができなかった。
失血により遥の体温がどんどん下がってきている。
「山根……遥の体温が下がってきてる…」
「ボス、これで尾崎君の体を包んで……それ以上体温が下がらないようにしないと」
誠吾は山根が寄越したシートで遥の体を包んだ。
救急車が来るまでが永遠のように感じられる。遥の体を抱きしめながら、早く……早く誰か遥を助けてくれと誠吾は祈り続けた。
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