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処置室から額の傷を縫った青山が出てきた。
「青山、大丈夫か?」
「若頭……姐さんは……まだ、ですか?」
「ああ。でも、遥はきっと大丈夫だ……。ああ見えて、アイツは強いんだ…。撃たれたって死なねぇんだからよ…」
誠吾は精一杯の虚勢を張って平静を装った。
青山を巻き込んだのは自分だ。
しっかりと自分を保っていないと……青山が悪い訳じゃない。変な罪悪感をこれ以上青山に与えたくなかった。
「涼太…………!」
事後処理を終えて病院に駆けつけた正蔵が、青山の姿を見つけて駆け寄る。
「涼太、お前と遥が怪我をしたと聞いて……。大丈夫か?遥は……遥はどうした?」
「正蔵さん………」
青山はぽろぽろと涙を零して正蔵に抱き着いた。ずっと張り詰めていた心が正蔵の姿を見て一気に緩んでしまったのだ。
「遥は……まだ処置中だ…」
「誠吾……。お前は大丈夫か?」
正蔵の優しい声に誠吾も泣きそうになるが、ぐっと堪えて頷いた。
遥が今、一人で戦ってるのに自分がめそめそする訳にはいかないと己を奮い立たせる。
待っている時間は永遠に思われた。
四人で待合室で待っていたが、誰も一言も口を開かず黙って遥の処置が終わるのを待っていた。
「尾崎さんの御家族の方ですか?医師からお話があります」
随分長い時間待たされた後、ようやく看護師が誠吾を呼びに来た。
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