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食事も上手く飲み込めずに零すことが多くなり、遥は食べることを嫌がった。
「遥、ほらもう少し食べろ」
昼食を殆ど残す遥に誠吾が食べるようにすすめても、遥は首をふるふると横に振って拒否している。
「いい子だから、な、もう少し」
誠吾がどんだけすすめても遥は食べず、以前よりかなり痩せてきてしまっていた。
心配をかけて申し訳ない気持ちはあるのだが、食べるという作業が今の遥には辛すぎてどうしても食が進まない。
あの時に死んでしまえばよかった……。
食べられない自分を前にして困った顔をする誠吾を見ると、生きているのが申し訳ない気がしてならない。
ごめんなさいと言いたくても、言葉が上手く出せなくて伝えられない。
悲しくて遥の瞳からは涙が零れた。
泣いてしまった遥を見て、誠吾は狼狽える。
「すまん。無理強いして食べさせる気はないんだ。そんなに嫌だったか?」
そうじゃない。
誠吾さんにそんな困った顔はさせたくないのに。
遥は泣きながら誠吾の手を握った。
誠吾はその手を力強く握り返して遥の頭を優しく撫でた。
誠吾さんの手は温かくて…安心する。
こんなに泣いて、誠吾さんに迷惑ばかりかけていては駄目だ。
もっとしっかりしないと。
リハビリも……苦しいけどもっと頑張って、早く……早く良くならないと。
遥がそう思って涙を拭いた時、病室のドアがノックされて山根が中に入って来た。
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