第6夜

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「尾崎君こんにちは。おや……またボスが泣かせたんですか?」 遥は慌てて首を振って、違うと山根に訴えた。 山根はにっこり笑うと、手に持った包みを遥に手渡した。 「携帯用のホワイトボードです。伝えたいことがあればこちらに書くといいと思って」 「おお…さすが山根。気が利くなぁ」 遥は嬉しそうな顔をすると、早速ボードに『ありがとうございます』と記入した。 「どういたしまして。拓馬が選んでくれたんですよ。本当は今日、拓馬も連れてこようと思ったのですが……尾崎君の前に顔を出す資格がないと言って…」 あの日、悟を追って飛び出していった東は、持ち前の運動能力の高さから悟に追いついて捕らえることに成功したのだ。 だが、拘束しようとしていた時に悟が大声を出した。 『助けてください!ヤクザに攫われる!』 一見害の無さそうな優男の悟と、強面でいかにもヤクザといった東の外見が仇となり…。 東は通報されて警察に拘束され、悟は東が捕まっている隙にまんまと逃げおおせたのだ。 「悟の奴……本当に腹が立つな」 「拓馬も今度見つけたらタダでは置かないと言ってますよ」 本当にもう二度とあの人には会いたくない。 どこか、遠くに逃げていてくれたらいいなと遥は思った。 山根が来てくれたことにより、遥は笑顔を見せてホワイトボードを使って山根と会話をした。 誠吾も会話に参加しながら、久しぶりに遥の笑顔を見られたことにホッとしていた。
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