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「あ……い……う……え…お…」
「おお!凄いな遥!ちゃんと発音できてるぞ!」
遥は懸命にリハビリを続けて、少しずつその成果が見られるようになっていた。
ただ、腎臓の数値が改善せずなかなか退院できずにいる。
誠吾は毎日病院に通って遥を見舞った。
誠吾が来ると遥は嬉しそうに笑ってくれるので、忙しくても病院には欠かさず通った。
『ごめんなさい。お仕事も忙しいのに』
「気にすんな。遥の顔を見ると癒されるから、自分のために来てるようなもんだ」
実際そうだった。
誠吾は遥が生きていてくれるだけでいいのだ。遥の顔を見ると安心できた。
『早く家に帰りたいです』
「そうだな。皆も寂しがってるぞ。俺も……一人で寝るのは寂しいよ」
遥は頬をほんのり赤く染めて頷いた。
遥もまた、病院で一人で寝ているのが寂しかったからだ。
いつも誠吾に抱き締められて眠っていたのが、個室で一人きりで眠るのは寂しく心細く感じていた。
「遥はまだ退院できないのか?」
「ああ。もう少しかかるみたいだな」
仕事の打ち合わせをしている時に正蔵が誠吾に尋ねた。
「リハビリは相当頑張ってんだけどな。腎臓の方の具合が悪くて……。遥は帰りたがってるんだけどな……」
「そうか…。涼太が気にしてずっと落ち込んでてな……」
青山には本当に悪い事をしたと、誠吾も後悔していた。
学校に行くのも最初は断ってきたのに、頑張って勉強してずっと遥に付き添っていてくれた。
今回のことで責任を感じている姿は痛々しい。
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