第6夜

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「遥も青山に会いたがってたから、連れてきてやってくれよ」 「ああ……そうだな。そうしよう」 遥が居ない黒川邸はひっそりとしていて活気がない。 遥の代わりに家事を引き受けているマツも、遥がいないと仕事に張合いがないと零してばかりだ。 早く……退院してきてくれないかな。 たとえ遥が喋れなくったって、居てくれるだけでいいんだ。 「せ、い、ご、さ…ん」 「うん。うんうん。いい感じに俺の名前を言えるようになってきたな」 誠吾が褒めると、遥は嬉しそうにパッと顔を輝かせた。 真面目な遥はリハビリの時間以外にも、時間があれば自主練をしているのを誠吾は知っている。 「今日は採血したんだろ?結果は聞いたのか?」 「ま、だ、」 今回の採血の結果で、腎臓の数値がよければ退院出来ると言われているので、誠吾も遥も結果が気になっていた。 コンコンコン。 ノックの音がしたので、採血の結果を医師が教えに来てくれたのかと思われたが、ドアを開けて入ってきたのは正蔵と青山だった。 「遥、どうだい?具合の方は」 「姐さん………」 久しぶりに二人の顔を見た遥は、嬉しそうににこにこと笑った。 その笑顔は以前と変わらず、周りを和ませる可愛いものだった。 青山は遥が元気そうなことに安心して表情を緩めたが、次の瞬間その表情は固まってしまった。 「あ、お、あ、ま、さ…ん」 笑顔で遥が青山の名前を呼んだのだ。 不明瞭な発音で、たどたどしく自分の名前を呼ばれて……元気そうに見えても酷い後遺症があったことを目の当たりにしてしまった。
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