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「姐さんは…可愛いけど、男らしいっす」
青山は泣きそうな顔をしながら笑って顔を上げた。
「だろ?俺が惚れた男だからな」
誠吾が得意げに遥の肩を抱く。
遥は照れながら誠吾の胸を軽く押した。
公認の仲とはいえ、正蔵や青山の前で堂々とイチャつくのは、やはり恥ずかしいのだ。
「なんだよ。少しくらいいいじゃないか」
「だ、め」
拗ねる誠吾を遥が笑いながら諌める。
病室内がホワホワと温かい空気に包まれた。
場を和ませるのは遥の才能だ。
笑い合いながら話していると、ノックの音がして医師が部屋に入って来た。
「尾崎さん、今朝の採血の結果が出ましたよ。少し数値は改善しましたけどまだ正常値にはなってませんね」
「退院はまだ出来ませんか?」
誠吾の問いに医師は渋い顔をしている。
遥は医師を見上げながら必死で訴えた。
「か、え、り、た…い」
「尾崎さん……。退院しても安静にできますか?仕事等してはいけないんですよ?」
遥はうんうんと首を縦に振った。
チラリと誠吾を見ると、誠吾は遥の顔を見て笑って頷いてくれた。
「必ず安静にさせて無理させません。リハビリにも付き添って通わせますので…どうか退院させてやってください」
誠吾が深々と頭を下げると、正蔵と青山も医師に向かって頭を下げた。
遥の願いを叶えてやりたい。
皆、その気持ちでいっぱいだった。
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