第6夜

12/23
前へ
/232ページ
次へ
「………分かりました。では退院を許可しましょう」 遥はくしゃくしゃに顔をゆがめて笑った。 帰宅すれば、また迷惑をかけてしまう。 それでも誠吾達が、自分の退院を後押ししてくれたのが本当に嬉しかった。 「あ、り、が、と」 「よかったな遥。一緒に家に帰ろうな。あ、帰ったらちゃんと飯は食べないとダメだぞ」 うんうんと遥は大きく頷く。 家に帰れる。 誠吾と、皆の暮らす自分の居場所へ……。 遥が退院することになり、正蔵は組員達を集めて話をした。 遥は言葉が不自由なので困らせないこと、まだ安静が必要なので働かせないこと等の注意事項を話していく。 皆、真剣な顔をして頷きながら聞いていた。 「悟の奴……姐さんを何度も酷い目に遭わせて、逃げてるなんて許せない」 「仮釈放中だったからな、警察も血眼になって探してるからそのうち捕まるだろう」 悔しがる青山を正蔵が宥める。 正蔵とて悟は許せない。 たどたどしくしか言葉を話せない遥を見て、あの時正蔵も泣きそうになってしまったのだから。 「とにかく、遥が帰ってきたら笑って迎えてやろう。な?」 「はい……そうですね。姐さんは……いつも笑顔ですもんね」 荒井の運転する車で、誠吾に付き添われた遥が帰宅した時、組員達は総出で門から並んで遥を出迎えた。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2797人が本棚に入れています
本棚に追加