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遥が元気な時なら、こんなお誘いは嬉しくて堪らなかったが……。
「俺はいつだって遥を抱きたいよ。だけどな、遥のことが大切だから……今は抱けないよ」
遥の体調を元に戻すことが一番大事だ。
俺の欲望のままに遥に無理させるなんてことは、絶対にできない。
誠吾がよしよしと頭を撫でると、遥は恥ずかしそうに俯いた。
誠吾に大事にされているのが分かって嬉しかった。暫くぶりに誠吾と繋がりたいという思いはあったが……今はおとなしく医師の言うことを聞いた方がいいのだろう。
『困らせてごめんなさい』
「いや……。元気になったら…いっぱいしような」
遥の顎をすくって誠吾はちゅっと口付けた。
口内に舌を差し込んで上顎や舌先を舐めると、遥もそれに応えようと自分の舌を動かす。
遥のザラザラとした傷跡に舌が触れた時、誠吾は我に返った。
久しぶりの深いキスに思わず夢中になってしまったと反省する。
「す、すまん。ほら、早く横になってゆっくり休んでくれ、な?」
「は、い……」
口端から垂れる涎を拭うと、遥は微笑んでベッドに横たわった。
目を閉じると、体はやはり疲れていたのかあっという間に遥は眠りに落ちていった。
遥の舌に、今まで無かった傷跡の感触があった………。
腰の傷と舌の傷と……。
綺麗な遥の体に、また傷をつけてしまったと、誠吾は悔しかった。
遥自身は自分のせいだと言って誰のことも恨んでおらず、撃たれても舌を噛んでも死なないなんて自分は運がいいやと笑っていたが……。
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