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俺なんかと付き合ったせいで……。
俺と付き合わなければ悟に目をつけられるのともなく、平穏な人生を送れたのかもしれない。
何度も命の危険に晒されることもなく、カタギの人間と幸せに……。
遥が誰か別の人間と幸せになどと想像しただけで、誠吾の胸が締め付けられた。
無理だ……。
自分はもう遥を手放すことなどできない。
遥無しでどう生きたらよいのか、分からない。
「ごめんな遥……。面倒な男に惚れられて…」
誠吾が遥の額に優しくキスを落としても遥は起きず、幸せそうな顔をして眠っていた。
黒川の家で療養するようになって、遥は見違えるように元気になっていった。
マツや組員達が作ってくれた食事を残すのが申し訳なくて、頑張って食事をとったおかげで体重も元に戻りつつあった。
することがないので自主的にリハビリを頑張り、言葉もかなり話せるようになってきている。
「たいくつ、です」
ベッドの上で手持ち無沙汰に本を読んでいた遥だったが、見舞いに来た山根にぽつりと本音を漏らした。
「そうじとか、料理とか、したい、です」
起き上がって少し何かをしようとすると、誠吾や組員達が飛んできてベッドに戻されてしまう。
大事にされるのは有難いのだが、体の怠さもなく元気なのでとにかく暇で堪らなかった。
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