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「先ほど尾崎君は、学校はもう諦めたと言っていました…」
「あ、ああ。俺にもそう言ってたぞ…」
そうだ。
遥も学校にはもう行かないと言っていた…。
「それが尾崎君の本心だと思いますか?」
「それは……」
山根に痛いところを突かれて誠吾は返事が出来なかった。
遥は優しいから、皆に迷惑をかけてまで自分の想いを通したくはないのだろう。
俺はそれが分かっていて…。
遥の優しさに甘えているのだ。
「このまま、尾崎君を家に閉じ込めておくおつもりですか?これからずっと…」
「うるせえな……。俺だって……分かってるんだよ……」
誠吾は立ち上がって窓から外を見た。
通りには下校する学生達が楽しそうに歩いているのが見える。
遥も本来ならああいう風になるべきだったのに………。
「心配で……心配で外に出したくねぇんだよ…」
「それは分かります。でも、あの子にも意思があるということを忘れてはいけません。貴方の自己満足のために閉じ込めるなど……」
山根は静かに話しているが、誠吾にはその的を射た言葉は胸を抉られるように厳しいものだった。
俺は……遥の為と言いながら、自分の為に遥を外に出したくないんだ…。
楽しそうに学校の話をする遥を、可愛いと思いながら……遥が俺の知らない場所で知らない奴らと人間関係を築いていくのが怖かった。
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