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「うわー本当にマリモじゃん。ウケるんだけど〜〜」 「何なんだよお前! 人に向かって失礼だな!?」 と、尊い……………………。 ツイッターでしか口走らないようなオタク形容詞が咄嗟に脳裏に浮かぶほど、俺のテンションは爆アゲだった。不自然にニヤけないように口元を引き締めながら、そこで繰り広げられている光景を網膜に焼きつける。 ここはカフェテリア。目の前ではチャラ男会計(仮)こと中条が、動くマリモ――本当に妄想通りのビジュアルだったこと、転校生に絡んでいる。 警戒した様子でそれを眺めているのは転校生の友人たちだ。きっとビジュアル的に一匹狼系同室者と爽やかクラスメイトだろう。幾多の王道学園もの小説を読んできた俺にはわかる。   創作物の中でしか見たことのない光景が、目の前で繰り広げられている。 俺は十字を切って神に感謝をした。 「ねえねえ、それ地毛なの? セットしてんの?」 「これはウィッ――じ、地毛! 生まれつきこれ!」 ウィッグなんだよなあ〜〜〜〜〜知ってる〜〜〜〜〜〜〜!  完全に部外者の俺は内心で大興奮だ。そうそうウィッグなんだよアレ。外すと金髪青目の美少年が出てくるやつだから。わかるわかる。なぜなら俺は暇さえあれば「BL 学園 王道」で検索をかけているような生粋のクソ腐男子だからだ。 俺が内心ハアハア言いながら舐め回すように見ているとは知らず、「マジでウケんだけど!」と中条はケラケラしている。いいぞ……もっと絡め……俺は総受けからの会計ルートでも全然ありだ……。 そんなことを考えていると、やりとりを見ていた腹黒副会長、篠崎がついに口を開いた。 「こら、中条。ごめんね、うちの会計が」 困ったように微笑む篠崎は完全に王子様スイッチが入っている。よし行け篠崎、副会長ルートに持ち込んでやれ。俺は手のひら返しの激しい外野のオタクだ。 「…………宗先輩、動悸ヤバいんすけど…………」 「おっと」 鼻息荒く王道イベントを観戦していると、相変わらず俺の腕にくっついている榊に指摘された。いや心臓の音聴こえてんのかよ。恥ずかしいわ。榊の耳がいいのか俺が興奮しすぎているのかどっちだろう。
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