天醜爛漫

4/13
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 交流のきっかけとしては身内であることが大きかったかもしれない。  絢子の巻いた紙巻を、燻らせながら談笑することは他人では難しかっただろうし。絢子や子らの幸せそうな顔を見るのは確かに喜びだった。  ただ、それを差っ引いても、狐狸ばかりの政界で気を張った分、私生活では息苦しさを感じない存在を好ましく感じたのではないだろうか。  しかし、俺はと言えば。  親友だと思う気持ちと、それとは全く違う気持ちが、ジクジクと、疼きを伴って腹の中で同居していた。  近衛の意志の強さを現すような凛々しい眉の下で、濃い縁取りの睫毛が、オパールの瞳に影を落とす。  艶やかな黒髪は、刷毛で掃いたように象牙の肌を覆う。  細身ではあるが、服の上からも弾性を感じられるしなやかな筋肉が大柄な骨組みを繋ぎ、石膏の英雄のような雄々しさが形作られている。  そして、その知性が引き結ばせる厚い唇は、時折、優美に弧を描く。  俺は、多分、最初から降伏していた。近衛という存在に囚われてしまった。こんなにも切なく、諦められない恋は初めてだった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!