0人が本棚に入れています
本棚に追加
この村に来て3日。その間天気にも恵まれ、今日も晴天。気持ちのいい風と青い空。
下宿先の乙女は水車小屋の小川で裸足になり、水しぶきをあげて笑う。
走り書き、黒鉛筆の僕の絵を見て笑う。
「あははっ!旅人さん、あたしってこんなに可愛くないよ!」
笑う。
笑う。
笑顔しか知らない乙女。
恐れなど知らない乙女。
村を去る僕に「途中で食べて」とパンを2個。
そして「サヨナラ!」と手を振る顔も屈託のない笑顔で……。
『人も景色もみんな、いい村だったな』
歩きながら僕は呟く。足元で野良猫が「みゃあ」と鳴いた。
次の土地ではどんな人に会えるかな。どんな笑顔に会えるかな。
願わくば、食べ物がおいしくて、気持ちのいい人たちと土地の言葉を聞きながらたくさん話ができる。
そんなのがいいな。
村から着いてきた三毛猫は、いつの間にかいなくなっていた。
僕はパンをかじり、またひとり旅に出る。
END.
Thank You!
最初のコメントを投稿しよう!