ひみつ

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「大丈夫。2人は上手くやってたよ。私がどうして分かったのか、教えてあげるね。私ね、写真に写っている人の顔を撫でると、その人の心が手に取るように分かっちゃうのよ。それに気付いたのは、タケと初めて撮ったツーショット写真を撫でていた時だったなぁ。ちょっと天邪鬼な私のことが好きで好きでたまらなかったんだよね?」 私の足が真っ黒な冷たい海に踏み入れた。ビーチサンダルをしっかりと足の指で挟む。波が引いていく力に足を取られそうになりながらも、私は進む。 ズッズッズ……ズズッ……… ようやく塊が浮き、一気に軽くなってほっとする。 そのまま進むうちに、いよいよ水は私のお腹辺りまできた。 塊をさらに沖へ引っ張っていく。 「それからはね、いろんな写真を試したの。人って秘密が多いんだねぇ。村長は公園の女子トイレの音を聴くのが趣味だったし、中村先生はミカちゃんのお母さんのことばかり考えてたし、ダイチくんはミヨちゃんのリコーダーを盗った。全部知ってるのに、全部知らないふりしてるの、大変だったなぁ。だからね、一通り試してからは、写真を“見る”の、やめたのよ。ふふっ。タケとの以外はね。聴こえてるかなぁ」 ピクリとも動かず丸太のように浮かぶその塊に、語り続ける。
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