ひみつ

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「最近、私って写真撮ってばかりだったでしょう? 悲しかったんだよ。タケの気持ちがどんどんサユミに傾いて、私のことは、どうしたら離れられるかばっかり」 こんなの嘘だって思いたくて、何度も何度も写真を撮って、その度に撫でた。でも、私の心は“見る”度に墨汁で染まっていった。昔から“知らないふり”を鍛えていただけあって、私、平然を装うの上手だったでしょう? そんな私の心が確かな憎しみに変わったのは、あの時だ。 「サユミを好きになったことは許してあげる。真面目なタケのことだから、浮気じゃなくて本気だったんでしょう? 私を殺そうとしたことも、海に捨てようとしたことも許してあげる。 だけどね。私と想いを通じ合わせたこの場所で、2人はいつも密会していたよね? 私の大切な思い出までぶち壊したよね? この場所を汚したよね? それはどうしても、許してあげられなかったなぁ」 足がなんとか付くギリギリで止まり、私はその塊と位置を入れ替えると、沖へ向かって思いきり押し出した。
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