【だいすき】

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【だいすき】

熱がでた。 風邪をひいた。 ゆっくり体を 横たわらせ、 目を閉じる。 緩やかな温かさの 片隅に ガタガタ動く 洗濯機の音。 カチャカチャ擦れる食器の音。 トン・トン・と のんびりした 包丁の音。 うとうとし始めると ほんわか香る 食べもののにおい。 「熱が高くならないといいね。」 誰かが、 わたしのことを 気にかけてる。 ガタガタ揺れてた 洗濯機が止まり、 静かになると、 中の衣類を 取り出し始めた 気配。 「お天気いいから 外に干そうか。」 開け放つ窓から香る春の香り。 きっとこれから、 大量のタオルと 私達が昨日着てた 洋服を干すのかな。 おかあさんは いそがしい。 おかあさんは やさしい。 おかあさんは こわい。 おかあさんは すごい。 スーパーのレジに 並んでる人も 公園で子供を 見守りながら お話してる人も 自転車に乗って 走ってる人も 綺麗なスーツで バスを待ってる人も もしかしたら、 誰かのおかあさんで 誰かのこども。 おかあさん。 ご飯作ってね。 おかあさん。 あの絵本を また、 読んでくれる? おかあさん。 元気でいてね。 おかあさん。 大好き。 おかあさん。 いつまでも、 そばにいて。 ひんやり冷たい手が おでこにふれる。 ちょっとちいさな 手のひらが、 わたしのほっぺに ふれてくる。 「ママ? 泣いてるの?」 「ママ?いたい、 いたいの?」 目をあけると、 ふたりの子供が わたしをのぞきこむ。 「ママ、おみそしる 作ったよ。」 「ママ、お姉ちゃんと 作ったよ。」 冷たい手 ちいさな手は わたしの大事な お子様ふたり。 「食べる?」 うなづくと、 ふたりが、 弾けるように 笑った。 ゆっくり手にした お椀に浮かぶ 不揃いなお豆腐。 いつもより薄めの 出汁の味 「おいしい?」 心配そうなかおを するふたりに 笑顔でうなづくと、 また、弾ける笑顔で 笑ってくれた。 満足そうなふたりに 言えない ホントの味。 でもね。 あのね。 おいしいよ。 そして、思い出す。 わたしも おかあさんに 作ってあげた あの日のことを。。 「あのね。。」 モジモジする2人を 見つめる。 うん。 わかってる。 わたしも知ってる。 「ママのおしごとは たいへんだね」 外を見ると、 たぶん、 キレイに干したつもりの洗濯物。 見渡すと片付けたつもりの おもちゃたち。 もういちど ふたりに視線を 戻す。 目が合う。 うれしそうに わらう。 「ママ、 いつもおいしい ごはん ありがとう!!」 おかあさん、 いつもありがとう。 おかあさんは、 やっぱり すごいな おかあさん。 大好きだよ。 (おわり) ✤あなたに出逢えたことへの 心からの感謝を。。✤ Special Thanks for you. 2020/ 3・1 ㊐
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