逃げられない

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「ひっ、やばいっすよこれ」  狼狽する村野の視線の先を見ると、樹木の表面に釘の打たれた藁人形がびっしりと張り巡らされていた。  本来なら驚くべきところだったのだろうが、酔いの治まらない俺は思わず笑ってしまった。 「ふははは、なんで同じ場所で呪いの儀式をやるんだよ!」 「そう言われるとそうっすね!」  すると村野はスマホをかざしてシャッターを切り始めた。 「そうだ先輩、一緒に写真撮りましょうよ!なんか写るかもですよ」 「お前とツーショットとか、女の子ともしたことがないのに!」  そう言いながらも樹木を背景に俺たちは肩を並べ、Vサインでポーズをとると数枚写真を撮った。  撮り終えた写真を早速村野が確認すると、一瞬にして顔が青ざめた。 「やばいっすよこれ」 「今度は何がやばいんだって・・・え?」  撮った写真には俺と村野二人だけが写っていたが、二人の首から上は消えており、写るはずのない後ろの藁人形がはっきりと写っていた。俺たちは目をこすりもう一度確認するが、やはり首から上はなかった。   「心霊写真、撮っちゃいました」  明らかな心霊写真を見て一気に酔いが覚めた俺たちは、恐怖で叫び上げながら一目散に神社から立ち去った。  激しく息を切らしながらどれくらい走ったかも分からない。その後疲労で膝が耐えきれなくなり、俺たちは道の真ん中で崩れ落ちた。  それから数分くらい休憩した後、俺たちはもう一度写真を確認した。それでもやはり首から上はない。 「の、呪われたんすかね、俺たち」 「わからん。でもこの手の心霊写真って消えた体の部位がどうかなるんだろ。頭って、下手したら俺たち死ぬんじゃないか」 「怖いこと言わないでくださいよ!」  そう考えるとなんだか全身に鳥肌が立ってくると同時に首筋に妙な冷たさを感じた。  すると、頭上から電光看板が落ちてきた。 「うわっあぶねえ!!」  間一髪で俺たちは避ける事ができた。看板を固定するネジの部分が錆びていたようだ。  偶然と言うべきか必然というべきか区別が付かない状況に危機感を感じ、俺たちは急いで家に帰った。  その夜は眠る事ができず、布団に包まりガタガタと震えていた。
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