逃げられない

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 しかしいつの間にか眠ってしまっていたようで、すんなりと朝が訪れた。  朝日を浴びると不思議と安心できた気がして、自然と昨日の事も深く考えないようになっていた。  その日もいつも通り仕事で、俺はいつも通り身支度を済ませ家を出る。  大通りを何の警戒もせず歩き駅に辿り着く。駅のホームで数分後に到着する電車をポケットに手を入れながら待っていた。  なんだ、やっぱり気のせいだったんだ。  そんなことを考えていると突然、後ろを歩いていた男性の肩にぶつかり、その勢いでよろめいた俺の身体がホームに投げ出されてしまった。 「うわっ!」  そして運の悪いことに、この駅を通過する快速電車が速度を緩めることなく走って来た。 「あぶない!人が落ちたぞ!」  そう言いながら線路で腰を抜かす俺の姿を見守る民衆は誰一人手を伸ばしてくれないかった。  まずいまずい!首だけじゃすまない、木っ端微塵にされてしまう。  すぐにホームによじ登ろうとするが、こんな時に限って腰の調子が悪く、上手く上がることができない。 「もうだめだ!」  これが火事場の馬鹿力というものか、今まで使ったことのないくらいの力で這い上がり、間一髪で電車を避ける事ができた。それから騒ぎを聞きつけた駅員が数名駆けつけ、俺は擦り傷ですんで事なきを得た。 「なんだ一体・・・」  最早そんな言葉しか出てこない。命が無事だったことに安心していたが、すぐに不安が過ってしまった。  あの写真の事を思い出してしまったからだ。  これから毎日、俺は命の危機にさらされるのか。
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