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それはほんの軽い気持ちだった。
しかし俺はこの時のことを深く後悔している。
会社の帰りに同僚と飲み会に行き、上司の愚痴を叩き合いながら大酒を喰らいへべれけになった後、その勢いで心霊スポットに行こうという話になった。
「近くに廃墟の神社があるんすけどね、そこに出るらしいんすよ!」
後輩の村野がそう言いながら千鳥足で俺を促す。はたして、泥酔したこいつがまともに目的地に辿り着けるかは疑問だが、そんなこともお構いなしに俺も付いて行った。
どうやら俺も泥酔しているらしい。どの道をどう曲がっているのか、どんな景色なのか一切覚えていない。
「でるって、女だったら大歓迎だなっ!」
そんな冗談を言えるほど、俺たちには緊張感がなかったようだ。
おぼつかない足取りで辿り着いた神社の入り口には階段が続く。所々亀裂が走り、雑草が覆いかぶさっていることから察するに、随分と整備がされていないのだろう。転ばないように注意するほどの判断力が乏しい俺たちは、つまずきながらもようやく鳥居をくぐることができた。
そこは小さな神社で境内は広くはなく、目の前には今にも崩れ落ちそうな本殿、その隣にはそびえ立つ御神木、右手前の手水舎は乾ききっていた。
周囲は鬱蒼と樹木が茂り、本殿に射す月明かりだけが頼りだった。
「暗い暗い、とりあえず明かり点けましょう。スマホスマホ!」
村野が早速スマートフォンで明かりを確保すると、暗くて見えなかった樹木の表面が見えた。そこにはできれば目にしたくない不気味なものがあった。
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